
市場のデジタルシフトが加速する現代において、多くの企業が営業活動の変革を迫られています。特にBtoB領域では、顧客の購買プロセスが複雑化し、従来の足で稼ぐ営業スタイルだけでは新規顧客開拓に限界が見え始めています。その解決策として「インサイドセールス」の導入が進む一方で、インサイドセールスとフィールドセールスの連携がうまくいかず、かえって非効率になるという新たな課題が浮き彫りになっているのではないでしょうか。本記事では、この根深い課題を解決し、営業組織全体の生産性を上げるための、インサイドセールスとフィールドセールスの戦略的な連携モデルを3つのパターンに分けて徹底解説します。
インサイドセールスとフィールドセールスの連携が「戦略の中核」となる理由
現代のBtoB顧客は、営業担当者と接触する前にオンライン上で積極的に情報収集を行っており、その行動変化は営業プロセスにおける各部門の役割を見直す必要性を示しています。そのような状況下で、インサイドセールスとフィールドセールスの連携が分断されていると、顧客情報の共有不足からアプローチの一貫性が損なわれ、顧客体験の質が低下しかねません。その結果、貴重な商談獲得の機会を逃すリスクも高まります。
また、多くの企業ではマーケティング部門が提供するリードの質や量と、営業部門が求めるものとの間にギャップが生じているケースも少なくありません。このギャップを埋めるためには、営業プロセスの中でインサイドセールスとフィールドセールスが密に連携し、顧客データを共有した上で一貫した戦略に基づいて行動する体制が求められます。
こうした連携体制を構築することが、営業DXの推進につながり、BtoBマーケティング全体の成果を最大化するための鍵となります。
営業成果を最大化するインサイドセールス連携モデル3選
効果的な連携のかたちは、商材やターゲット市場、組織体制によって異なります。営業戦略や組織課題と照らし合わせながら、最適なアプローチを検討しましょう。どのようなモデルが最適か検討する際の参考として、実践的かつ応用性の高い代表的な3つの連携パターンをご紹介します。
1. リレー型連携モデル
リレー型は、インサイドセールスとフィールドセールスの役割を明確に分離し、バトンを渡すように案件を引き継ぐ、最も標準的な連携モデルです。インサイドセールス(特にSDRやBDR)が、マーケティング部門が生み出した インバウンドリードなどに対してアプローチすることで関係を構築します。そして、顧客ニーズや課題を正確に把握し、商談化の基準を満たしたタイミングでフィールドセールスへ案件を引き渡します。
このモデルの成功の鍵は、引き渡し基準の明確化にあります。ここで有効なのが、リードの属性や行動履歴に基づいて点数付けを行うスコアリングです。このスコアリングの仕組みを利用する ことで、客観的な基準で育成された ホットリードを見極めることが可能になります。スコアリングの結果やBANT条件などを基に、どのような状態のリードを「商談化(ホットリード)」と判断するのか、その基準を両部門ですり合わせ、SFA(営業支援ツール)上で誰もが確認できる状態にしておく必要があります。
リレー型は、多くのBtoB企業にとって導入しやすく、効率的にリードを獲得するプロセスを標準化し、営業効率を高めたい場合に非常に有効なモデルです。
2. 協業型連携モデル
複数の部門が関与し、意思決定のプロセスが長期化しやすい大規模な案件では、「協業型」の営業連携モデルが特に効果を発揮します。これは、ABM(アカウントベースドマーケティング)戦略のように、特定のターゲット企業を深く理解し、戦略的にアプローチする必要がある場面で活用されます。
このモデルでは、インサイドセールスとフィールドセールスが、案件の初期段階から一つのチームとして連携し、それぞれの強みを活かしながら協働でアプローチしていくことが求められます。
たとえば、インサイドセールスはターゲット企業の組織構造やキーパーソンをリサーチし、電話やメールなどで初期接点を築きます。一方で、フィールドセールスは業界知識や過去の提案事例を踏まえながら、商談全体の戦略設計を担います。両者は定期的に情報をすり合わせ、それぞれの活動から得られた知見を共有し、次のアクションをチームで練っていくことが重要です。
こうした連携体制を強化するには、ABMツールやインテントデータなどの営業支援ソリューションの活用が有効です。たとえば、Web上の行動履歴から顧客の興味・関心を可視化するインテントデータや、リード育成・初期アプローチを自動化するAI SDRを活用することで、より精度の高い、データドリブンな営業活動が可能になります。
3. ハイブリッド型連携モデル
ハイブリッド型とは、リレー型と協業型の特長を組み合わせたり、状況に応じて営業担当者の役割を柔軟に切り替える運用モデルです。企業の規模、取り扱う商材、顧客ニーズの多様性に応じて、その時々で最も営業効率の高いアプローチを選択します。たとえば、比較的規模の小さい案件や既存顧客へのアップセル・クロスセルでは、インサイドセールスがクロージングまで一貫して対応する「ワンストップ型」の運用が有効です。
一方で、新規の大規模案件に対しては、まずは協業型でアプローチを開始し、商談が進展して関係構築が進んだタイミングで、フィールドセールスが主導権を持つといった流動的な役割分担を行うケースもあります。このように、ハイブリッド型では営業担当者それぞれに高いスキルと状況判断力が求められますが、その分、顧客ニーズにきめ細かく対応できるのが大きなメリットです。ハイブリッド型を円滑に運用するには、SFAやCRMといった営業支援ツールを活用し、営業活動の情報を一元管理できる体制の構築が極めて重要です。

連携モデル成功の鍵を握るテクノロジーとデータ活用
これまで紹介してきた3つの連携モデルは、属人的な努力だけでは安定した成果につながりません。これらを効果的に機能させるためには、テクノロジーとデータの戦略的な活用が欠かせません。たとえば、AIや営業支援ツールを活用することで、「見込み客の情報収集」や「営業メールの作成」など、これまで多くの時間を要していた業務を効率化することが可能になります。こうした自動化や支援機能により、営業担当者はより付加価値の高い活動に集中できる環境が整います。
インサイドセールスとフィールドセールスの連携を強固にするためには、以下のようなツールの導入が重要な役割を果たします。
SFA / CRM
顧客情報や営業活動の履歴を一元管理するための中核的なツールです。こうした基盤を整えることで、部門間の情報共有や連携を最大限に活かすことが可能になります。
ABMツール
ターゲット企業のインテントデータ(興味・関心の兆候)を活用し、アプローチ先の優先順位付けや、ニーズに即した最適な提案・情報提供を支援します。
AI SDR
リードのスコアリングや初期対応の一部をAIが自動化することで、インサイドセールスが人間ならではの対話や提案に集中できる体制を構築できます。
これらの営業支援ツールを有効活用し、蓄積されたデータを分析することで、どの連携モデルが自社に最適なのか、また引き渡しのタイミングや基準は適切か、といった観点を客観的に検証・改善していくことが可能になります。
まとめ
インサイドセールスとフィールドセールスの連携は、いまや企業が新規顧客を継続的に獲得し、事業成長を実現していくうえで欠かせない戦略となっています。どちらか一方だけの最適化では、組織全体としての営業成果は頭打ちになりやすく、どれだけ個々の担当者が優秀であっても、リード獲得や商談創出の効率は思うように高まりません。
リレー型・協業型・ハイブリッド型といった3つの連携モデルを参考に、自社の営業スタイルやターゲット特性に最適な形を見極め、SFAやAI SDRなどのテクノロジーを活用してその基盤を整えていくことが、競争優位性を築く強力な後押しとなります。
まずは、インサイドセールスとフィールドセールスの双方の責任者が対話を始め、現状の課題と理想の連携像をすり合わせることから着手してみましょう。それが、持続的なリード創出と商談獲得を実現する営業体制への第一歩となるはずです。